小笠原探鳥記(9・了)~オガサワラヒメミズナギドリ、珍海獣コマッコウ

小笠原探鳥記(9・了)~オガサワラヒメミズナギドリ、珍海獣コマッコウ

9/14~19 小笠原の旅、ラストです。

▼18日、父島を出ると盛大かつ長い長い船のお見送りがありました。毎回こんな熱いお見送りがあるとは知らなかったので、心底驚きました。

お見送りが終了した16時ごろから航路探鳥を始めましたが、すでに日が傾き始め、海はベタ凪です。
薄暗くなると動体視力が落ちてただでさえチンプンカンプンの海鳥がますます見つけづらくなるので、ベテランのリーダーの隣を確保して一羽一羽答え合わせをしながら見ていました。

▼黒がかすれたような翼の下面が特徴的なオナガミズナギドリ。(Wedge-tailed Shearwater)

▼そんな中、全くの突然、大きな魚のような謎の生き物が海面を何度もジャンプし始めました。
腹部がピンク色で背中が濃いグレー。イルカ?カツオ?ジュゴン??
騒然としましたが、誰も正体がわからずもやもやを抱えた状態になりました。

▼その後、これは生きている状態で観察されることが極めてまれなコマッコウという小型のクジラであることがわかりました。とにかく観察例が少なく、詳しい方は海上で見たら絶句するレベルの珍怪獣だそうです。(Pygmy Sperm Whale)

▼そんな謎のコマッコウを見た直後のこと、17時すぎの聟島列島の真西でした。
「オナガミズナギドリ…これもオナガミズナギドリ…」と船体に飛ばされていく多数のミズナギドリ類を見ていたとき、背中がずいぶん黒っぽく、翼が丸いような感じのミズナギドリが飛び出しました。

▼サイズは特別小さいとも思わなかったのですが、今まで見ていたオナガミズナギドリと違い、明確に分かれたツートンカラーで、パタパタと低めに飛ぶ姿に違和感を覚えて、それまで下げていたカメラを構えました。

▼「セグロミズナギドリか…あるいは幻のオガサワラヒメミズナギドリ!いずれにしろライファーだから絶対撮らねば」と、とにかく連射しまくりました。
下面は真っ白で、遠くを飛んでいても夕日を浴びてキラッキラッと光るように見えました。

▼撮れた写真を確認すると、目の周りが白く、嘴は青灰色で先は黒、下尾筒から腰に食い込むように白い部分があり、図鑑のオガサワラヒメミズナギドリと完全一致しています。(Bryan’s shearwater)

▼オガサワラヒメミズナギドリは2012年DNA分析で新種と認定されたものの生存個体が見つかっていないため絶滅したものと考えられていましたが、2015年小笠原の東島で生きた状態で10羽が発見され、世界中で生息数は2桁とも言われているまさに幻の鳥です。

前日の夜、旅のメンバーとレストランで「これで最後にオガサワラヒメミズナギドリが出たらとんでもなく素晴らしい締めくくりですけどね」と話していましたが、まさか現実になるとは思っていませんでした。航路なので偶然性は関係がありますが、保全活動で個体数自体が増えてきていることも考えられます。これからも注目していきたい鳥になりました。


 

▼19日、目を覚ますとあたりはすっかりオオミズナギドリの世界になっていました。(Streaked Shearwater)

▼この日は特別な鳥は出ないおとなしい海況でした。
さて、今回の小笠原ツアーは全体を通してこれ以上ないくらい素晴らしい鳥果でした。
企画して下さったリーダー、小笠原に精通した地元の方、旅のメンバーにはそれぞれ大変お世話になりました。お陰様で楽しく充実した時を過ごすことができ、感謝しております。また、長きに渡った拙い小笠原探鳥記をお読み下さった方もありがとうございました。
写真は東京湾のアジサシ。(Common Tern)